「ナッジ理論と恋愛」: 行動経済学が教える恋愛テクニックとは?
最近「ナッジ理論や行動経済学」という言葉をよく聞くけど、恋愛には活用できないの?
ナッジ理論や行動経済学を知るアンテナの感度が高いあなたは、純粋にそう疑問に思いますよね。
というのも、ナッジ理論や行動経済学はビジネス界隈では、いろんな手法が紹介されていますが、恋愛での活用事例はあまり多くありません。
私は会社員時代に行動経済学に出会い、その面白さに取りつかれ、勉強を重ねた結果、今では「行動経済学オタク」と化しています。
この記事では、そんな行動経済学オタクの私が考えるナッジ理論の恋愛への応用テクニックについて解説します。
この記事はあなたへのナッジです。あなたの恋愛をさらに良い方向に変えることができるかも…です。
ナッジ理論とは
1970年代に行動経済学が登場し、ナッジ理論はその一部として生まれました。この理論は、人々の選択を少し「押す」ことで、彼らの行動を変えることができるというものです。
例えば、コンビニなどの床に描かれた足跡マーク。足跡のマークに靴を揃えたくなる心理を利用し、バラバラと並ぶのを防ぐのと同時に、コロナ禍では「密」を防ぐためのソーシャルディスタンスの目安として効果を発揮しました。
このように強制ではなく、良い方向へ自然と選択を向かわせる仕掛けがナッジです。
ナッジ理論は、「人の行動は不合理だ」という前提のもとに人間の行動を心理学、経済学の側面から研究する「行動経済学」の教授によって発表されました。
この行動経済学を実社会で役に立てる一つの方向性として示されたのがナッジ理論です。2017 年にセイラー教授がこの「ナッジ理論」でノーベル経済学賞を受賞したことを皮切りに実社会の様々なシーンでの利用が始まっています。
多くの人が持つ認知バイアスとは
認知バイアスとは、私たちが受け取った情報を処理し、行動する際に影響を与える心の歪みや偏見のことです。
ナッジ理論は、ちょっとしたきっかけを与え相手の行動を変えるものですので、その人がもつ認知バイアスを理解することは必須になります。
ただし、人それぞれがもつ認知バイアスの個性は、ゼロかイチかではなく、人として備わっている認知バイアスの濃淡になります。そのため、ナッジを使うには、人として備わっている認知バイアスへの理解も当然必要になってきます。
以下が、人として備わっている認知バイアスの一例です。
認知バイアス | 説明 |
---|---|
現状維持バイアス | 現在の状態を維持しようとする傾向。現状に強い不満を持たない限り、変化を避け、現状維持を好む。 |
現在バイアス | 未来にある満足よりも、目の前の満足を優先させてしまうという心理傾向。人は将来価値よりも現在価値を高く見積もる。 |
アンカリング効果 | 初めに提示された情報(アンカー)に過度に影響を受け、それを基準として判断や評価を行う傾向。 |
損失回避バイアス | 損失の方が利益よりも2.25倍重く感じるため、得を追うよりも損を回避しようとする。 |
保有効果 | 自分の持っているものに実際よりも高い価値を感じること。 |
これらの認知バイアスを理解し、その場面ではどういう認知バイアスが行動に影響するかを予測できたら、多くの人の行動を変えるナッジが実践できます。
EASTフレームワークとは
ナッジって難しそうだけど、どうやって考えていったらいいの?
実際にナッジの設計をしやすく、現場で実践するために使いやすい形にしたのが、EASTフレームワークです。
EASTフレームワークは、以下のの4つの要素からなります。
EASTフレームワークの要素 | 説明 |
---|---|
Easy(簡単) | 簡単であること。 |
Attractive(魅力) | 人にとって魅力的であること。 |
Social(社会性) | 人の持つ社会性を活用すること。 |
Timely(適切なタイミング) | タイミングが適切であること。 |
実際に人の行動を変える方法を検討するとき、EASTフレームワークの要素の中から「できること」を考えると、効果的なナッジを発想することができます。
ナッジ理論を含めた行動経済学の恋愛への具体的な応用例
恋愛のシーンで使える、ナッジ理論を含めた行動経済学の応用例は次のとおりです。
- ポジティブな感情を喚起する
- デートは期間限定のスポットに誘う
- デート場所の選択肢を減らす
- 良い雰囲気になれる常連のデートスポットをつくる
- 盛り上がっているときに解散する
- 好きな相手だけでなく、相手の友達にも良い印象を与える
- 好きな人との別れを描いた映画を一緒に見る
- 家事をして相手の生活に入り込む
それぞれを具体的に解説します。
ポジティブな感情を喚起する
人はいろいろなものに対して、淡い感情をマーキングしています。そして、淡い感情には「ポジティブなもの」と「ネガティブなもの」があります。
例えば「コーヒー」が好きな人は、「スタバ」という言葉を聞いただけで無意識的にポジティブな淡い感情を抱きますが、これは「コーヒー」に「おいしい」や「落ち着く」などの感情がマーキングされているからです。
相手にとってポジティブな感情がマーキングされている言葉をあなたが発すると、相手の気持ちは前向きになります。そして、その感情により、あなたとのデートや食事など、関係性を深める行動を起こすきっかけになります。
そのため、会話やLINEなどのコミュニケーションの場面で、積極的にポジティブな感情を喚起する言葉を使うことをおススメします。
デートは期間限定のスポットに誘う
デートに誘いにくい場合がありませんか?
そんなときは期間限定のスポットに誘うのがおススメです。
期間限定なので、適切なタイミングですし、相手の気持ちには損失回避バイアスが働きます。
「期間限定のおしゃれスイーツ、食べられるの今だけだから、一緒に行こうよ!」と誘ってみてはどうでしょうか。
デート場所の選択肢を減らす
選択肢が多すぎると決断は難しくなり、行動を起こさない理由になります。
そのため、デート場所の選択肢を2、3か所に絞って提案すると、相手は決断しやすくなります。
そのときに、例えば「女性に人気のスポットに絞ったんだけど…」「〇〇ちゃんが好きって言ってたフルーツ自慢のカフェに絞ったんだけど…」と、数あるスポットの中から選択肢を減らしたことに対する合理的な理由を用意しておくと、より効果的です。
良い雰囲気になれる常連のデートスポットをつくる
デートにどこに行くか悩むことが多い場合、お互いが良いイメージを持っている常連のスポットをつくっておくと便利です。
良いイメージが想起されますし、不確実性も少ないので、デートに出かけるのに障害がなくなります。
盛り上がっているときに解散する
人の記憶に残るのは、最も盛り上がった時と最後です。そのため、会った時やデートの際は終わり方が大切です。
ですので、「今日のデートは楽しかった」と相手の記憶に良い印象を残すには、「ネタが尽きて盛り上がりに欠けたとき」よりも「盛り上がって楽しく感じているとき」にデートを終わらせるのが効果的です。
好きな相手だけでなく、相手の友達にも良い印象を与える
あなたのことを評価するとき、相手は周りの友達からの評価も意識します。
これは、バンドワゴン効果という心理効果で、「多くの人から評価が良いものをより一層良く評価する現象」です。
相手の周りの友達からの評価が高ければ、相手もあなたに対してより魅力を感じるので、相手の周りの友達にもできるだけ良い印象を与えるようにしましょう。
そのほか、モテる男性を演じること、見た目を整えておくことも大切です。
モテる男を演じたり、見た目を整えるのに必要なファッションやスキンケアは別の記事で解説していますので、こちらもご覧ください。
「ファッションがわからない男性のための正しい服装ガイド【モテ服とは】」
「【乾燥肌に悩むズボラな男性必見!】オールインワンおすすめランキング4選」
好きな人との別れを描いた映画を一緒に見る
人は現在バイアスにより、現在を重要視し、将来を軽く感じます。
そのため、未来に起こりうる「別れ」について、軽く考えがちです。
そんな軽く考えられている別れのリスクについて、好きな人との別れを描いた映画を一緒に見ると、別れのリスクが潜在的に刷り込まれます。
そして、損失回避バイアスにより別れを回避する心の動きが働くので、あなたを大切にしようとする行動につながります。
家事をして相手の生活に入り込む
家事をすることもあなたを大切にしようとする行動につながります。
というのも、料理や掃除、洗濯などあなたが家事の一部を負担すると、あなたが相手の日常生活に必要な要素となるからです。
そして、損失回避バイアスにより「あなたを失いたくない」という気持ちが強くなります。
料理や洗濯、掃除など家事の一部を積極的に行い、失うと相手の損失が大きくなるような存在になれるとかなり効果的です。
まとめ
ナッジ理論を含めた行動経済学の恋愛への具体的な応用例は次のとおりです。
- ポジティブな感情を喚起する
- デートは期間限定のスポットに誘う
- デート場所の選択肢を減らす
- 良い雰囲気になれる常連のデートスポットをつくる
- 盛り上がっているときに解散する
- 好きな相手だけでなく、相手の友達にも良い印象を与える
- 好きな人との別れを描いた映画を一緒に見る
- 家事をして相手の生活に入り込む
ここで紹介したのは、ほんの一例です。実際には相手の認知バイアスに合わせて、使えるナッジを考えていく必要があります。
実は、その「相手を知ろうとすること」が一番大切です。
というのも、相手と愛情を深めていくのに必要なのは、相手のことを理解することだからです。
心理学者のワラスが提唱している「偉大な発明の4ステップ」は、恋愛にも応用ができます。
- 準備期:相手の情報を収集する
- 孵化期:デートやメッセージのやりとりを重ねて、相手を理解していく
- 啓示期:この人が運命の人かもしれないと感じる
- 検証期:相手や周りの反応を見ながら、その恋を検証する
このステップの中で、孵化期にしっかりコミュニケーションをとり、相手のことを理解することが、安定的に恋愛を深めていくのに一番大切なことなのです。
人は感情で行動する生き物なので、ナッジ理論が有効ですが、そのぶん、お互いの感情理解も大切です。ぜひナッジを使う過程の中で、相手のことを理解し、恋愛を大きく育ててください。